137号 「金利のある時代」に考える。国債・社債と都心不動産、それぞれの役割とは
日本でも本格的な「金利のある時代」が到来しました。長らく続いた超低金利環境のなかでは、「預金以外なら何でも利回りが高い」と言われる状況でした。しかし足元では、個人向け国債や社債の利回りも上昇し、投資家が改めて債券に注目する動きが見られます。こうした環境の変化によって、「安定性の高い債券があるなら、不動産投資の必要性は薄れているのではないか」と考える方もいるかもしれません。 確かに、債券と不動産には共通点があります。どちらも定期的な収益を期待でき、株式のように日々の価格変動に一喜一憂する必要も比較的少ない資産です。
しかし、その収益がどこから生まれているのかを見てみると、その性格は大きく異なります。資産運用において重要なのは、「どちらが優れているか」ではなく、「どのような役割を担わせるか」です。今回は、債券と都心不動産を比較しながら、これからの資産防衛について考えてみたいと思います。
債券の強みは「約束された収益」
債券の魅力は、何といっても収益の見通しが立てやすいことです。満期まで保有すれば、あらかじめ定められた利息を受け取り、元本も返還されます。特に国債は日本政府の信用を背景としており、資産運用における安全資産の代表格とされています。例えば500万円を年利2%で運用すれば、税引前で年間10万円程度の収益が期待できます。将来受け取れる金額が概ね見えるため、退職後の生活設計や相続を見据えた資産管理との相性も良好です。また、最近の金利上昇局面では「ようやく債券らしい利回りが戻ってきた」という見方もあります。ただし、債券はあくまで「お金を貸す資産」です。そのため、収益の上限は基本的に利息部分に限定されます。購入後に大きく収益が伸びることは原則ありません。さらにインフレが進んだ場合、物価上昇率が利回りを上回れば実質的な資産価値は目減りします。債券は非常に優れた金融商品ですが、その本質は「資産を大きく増やす」よりも「資産を堅実に守る」ことにあると言えるでしょう。
不動産は「賃料」という別の収益源を持つ
一方、不動産投資の収益源は利息ではありません。不動産は、そこに住む人や利用する人から受け取る賃料によって収益が生まれます。つまり債券が「金利」によって価値を生むのに対し、不動産は「利用価値」によって価値を生む資産なのです。この違いは、経済環境が変化したときに大きく現れます。例えば物価や人件費が上昇するインフレ局面では、賃料相場も時間をかけて上昇する傾向があります。また、建築費の高騰は新規供給を抑制し、既存不動産の希少性を高める要因にもなります。実際、東京都心では人口流入が続いており、住宅需要は引き続き底堅い状況です。住宅需要が継続する限り、賃料収入という収益源も維持されやすくなります。もちろん不動産にも価格変動リスクや空室リスクは存在します。しかし、実物資産であるという特徴は、金融資産だけでは得にくい強みです。特に近年のように、インフレや金利変動が投資判断の中心テーマになっている局面では、「モノそのものに価値がある資産」の存在感が改めて高まっています。
社債と比較すると見えてくる「信用リスク」の違い
債券のなかでも、比較対象としてよく挙がるのが社債です。国債より高い利回りを期待できる一方で、発行企業の信用力に投資成果が左右されます。仮に企業業績が悪化した場合、債券価格が下落したり、最悪の場合は元本回収に影響が及ぶ可能性もあります。つまり社債のリスクの本質は、「企業一社への信用」にあります。一方で都心住宅への不動産投資は、特定企業への信用ではなく、住宅市場そのものの需要に支えられています。東京23区には多くの企業や大学、商業施設が集積し、国内外から人口が流入しています。投資対象が企業の経営成績ではなく、住宅需要そのものである点は、リスクの性質が大きく異なります。どちらが良い悪い、ということではありませんが、資産の一部を企業信用に依存し、別の一部を実物資産に振り分けることで、ポートフォリオ全体の安定性を高める考え方は十分に合理的と言えるでしょう。
本当に比較すべきは利回りではなく「資産の耐久力」
投資家が商品を比較する際、どうしても利回りに目が向きます。しかし、500万円以上のまとまった資産を運用する層になると、重要なのは単純な利回り競争ではありません。10年後、20年後に資産の価値を維持できるか。相続が発生した際に、金融環境が変わっていても資産として機能し続けるか。そうした視点こそが資産防衛の本質になります。債券は安全性と安定収益を担う優秀な資産です。一方で、不動産はインフレや人口動態といった現実経済に支えられる実物資産です。「債券か不動産か」という二者択一ではなく、「債券も不動産も持つ」という考え方が重要なのではないでしょうか。金利上昇によって債券の魅力が高まった今だからこそ、逆に改めて考えたいことがあります。それは、自分の資産のなかに、金融資産だけではなく実物資産がどれだけ組み込まれているかという視点です。これから迎える10年は、おそらく金利も物価も動く時代です。その変化に備えるための選択肢として、都心不動産が担う役割は、むしろ以前より大きくなっているのかもしれません。