127号 資産運用は不動産の小口化商品で

近年、小口化された不動産が余裕資金の運用手段として、多くの方に受け入れられるようになってきました。
その理由は大きく二つあります。

  1. 不動産投資は投機的要素が少なく、大きな利益は得にくい反面、安定したリターン(賃料収入)が期待でき、元本(投資金額)の安全性も高い。さらに、相続対策としても活用できる。
  2. 小口化されているため、大きな資金を必要とせず、管理の手間もかからない。複数の物件に分散投資できることでリスク低減も図れる。以下で詳しく見ていきましょう。

不動産投資の特徴

不動産投資は「大家さん業」

余裕資金の運用といえば投資信託や株式が一般的ですが、根強い人気を持つのが不動産投資です。代表的なのがワンルームマンション投資で、マンションを購入し他人に貸すことで賃料収入を得る仕組みです。平たく言えば「大家さん業」です。

不動産投資は「賭け」ではない

不動産投資の大きな特徴は、投資信託や株式投資と比べて投機的要素が少ないことです。つまり、「値上がりを期待して賭ける」という側面が小さいという点です。

リーマンショックやコロナ禍における株式投資

株式投資のリターンは配当と株価の値上がりに依存します。しかし現実には予測困難な出来事が相次ぎます。2008年のリーマンショックや2020年の新型コロナによる社会経済への打撃は、誰も正確に予測できませんでした。その結果、多くの企業が無配となり、株価は大幅に下落しました。

リーマンショックやコロナ禍における不動産投資

一方、不動産、特にマンションは大きく様子が異なります。リーマンショック時もコロナ禍においても、賃料や空室率への影響は限定的でした。衣食住の中でも「住」は生活に不可欠であり、景気に左右されにくいためです。特に東京23区のように需要と供給のバランスが取れている都市部では、その傾向が顕著です。

投資元本の推移

マンション価格はリーマンショック後に一時的にピーク比約8%下落しましたが、2年後にはすでに回復しプラスに転じました。その間も賃料収入はほぼ変わらず得られています。
一方、株価(日経平均)は約40%下落し、元の水準に戻るまで4~5年を要しました。その間、無配が続いた企業も少なくありませんでした。なお、コロナ禍では都心部のマンション価格はほとんど影響を受けていません。

小口化によるメリット

少額から投資できる

都心のワンルームマンションは4,000万円前後ですが、小口化商品であれば500万円程度から投資可能です。

立地を分散できる

4,000万円で1戸を購入する代わりに、例えば1,000万円ずつを異なる立地の物件に分散投資すれば、立地リスクを軽減できます。「不動産は立地次第」と言われるように、分散は安全性を高めます。

管理の手間が不要

マンション1戸を所有すると、退去時の対応や修繕、入居者からのクレーム対応など、最終判断はオーナーに委ねられます。これが大きな負担となる場合もあります。小口化商品なら、管理の手間を避けつつ投資できるため、資金面に余裕がある人でも選択するケースがあります。

相続時に分けやすい

不動産は資産圧縮効果により相続税対策になりますが、大きな不動産では複数の相続人間で不公平が生じやすいという難点があります。小口化商品であれば例えば100万円や500万円の単位で分けられるため、公平な分割が容易です。

本稿で述べている「小口化不動産」について

対象とする不動産

ここで扱うのは賃貸マンションです。商業施設やオフィスビルは景気変動の影響を受けやすく、リーマンショックやコロナ禍では入居率が大きく下がり、回復に時間を要しました。

対象とする小口化商品

想定しているのは、不動産そのものを共有持分に分割した商品(不動産特定共同事業における任意組合型)です。 REIT(リート)は証券市場で取引され、景気変動の影響を強く受けるため対象外としています。また、不動産特定共同事業の匿名組合型(クラウドファンディング商品に多い形態)も対象外です。匿名組合型は相続時に資産圧縮の効果がなく、事業者の倒産リスクと切り離されないため、元本の安全性に欠けるためです。